前回のブログで「26年ぶり」の出来事を書きましたが、その当時の私は大学3回生でアメリカンフットボールをプレイしていました。いま、世間を騒がしている日大のアメフト選手と同じ年齢でした。
日大のアメフト選手のタックル問題は、アメフトに関わる全ての人にとって悲しい出来事だったと思います。私は経験者ですので、日々お会いする方々から毎日のように、この事件について意見を聞かれている状況です。
こんな形でアメフトが注目されるのは非常に残念ではありますが、このスポーツを10年間プレーした人間として、この場で意見を書かせて頂きます。
先ず、アメフトは格闘技ですので試合前に相手を「潰せ」とか「壊してこい」という言葉は良く使われていたのは事実です。私は高校でラグビー、大学卒業後はフルコンタクト空手、総合格闘技なども経験しました。これらのスポーツは相手も自分に攻撃を加えてくるので、相手を本気で倒すつもりでなければ自分が壊されてしまう恐怖と戦わないといけない一面を持っています。
この点で監督・コーチが相手を「潰せ」=「そのくらいの気持ちでやらないと相手にやられるぞ」という意味で使ったという可能性は高いと思います。ただ、「やらないともう試合に出れないぞ」という交換条件でこの言葉を使ったなら、これはあの事件を起こす最大の要因になったと言って間違い無いでしょう。
2005年に起きたJRの脱線事故は、時刻表通りに運行できなかった運転手が、遅れを取り戻そうと速度違反をしたことが要因でした。2016年に起きた東芝の粉飾決算、こちらは歴代社長が赤字は許さないと現場に強いプレッシャーを与えた結果、粉飾して利益を出したことにしてしまいました。
この2つの事件では経営側は「時間を守れとは言ったが、速度違反をしろとは言っていない。」「利益を出せとは言ったが、粉飾をしろとは言っていない。」と主張していました。
今回の日大の事件も、監督・コーチは「QBを潰せとは言ったが、反則をしろとは言っていない。」と主張しています。おそらく、それは事実だと思います。しかし、強い権力を持った上司から指令を受けた部下・選手の方は、「監督の指令」>「ルール」であると受け止めてしまいました。これは企業において「社長の指示」>「法律」と全く同じ構図だと思います。
結果としてJRの運転手は速度違反、東芝は粉飾決算をしてしまいました。日大の守備選手が反則で相手チームのQBに大怪我を負わせたのも、これらと同じ上からの圧力によりスポーツで一番重要なフェアプレイの精神を見失ったことにより発生したのだと思います。
会社には「利益」より大事な「理念」、スポーツには「勝利」より大事な「人格形成」という使命があることを経営者・指導者は忘れてはいけないと思います。
今回の件、私自身も従業員に利益最優先のプレッシャーをかけていないか、省みる機会となりました。幸い、当社の従業員は「法令遵守・理念」>「社長の指示」をしっかり理解してくれていました。それでも意見を言いにくい雰囲気は少しあったようなので、改めて自分で考えて意見を出すことのできる風通しの良い会社を作って行きたいと思います。