今週は、トランプ大統領の関税発表で世界中に激震が走った1週間でした。
1ドル145円を切る円高になったことは、弊社のように輸入を行っている中小企業にとってはありがたいことですが、株価が急落して景気が冷え込むようなことは避けてほしいところです。
意外だったのは石破総理が訪米して友好関係を築いたかのように見えた日本に対しても24%の関税が発表されたことでした。単に友好国なだけでは優遇せず、アメリカからの輸入品に対して高い関税をかけているかどうかが判断基準になっているようです。日本はアメリカに対して46%の関税をかけているので半分の23%+1%(四捨五入で切り上げたと思われます)の24%という計算になっています。
アジアでは中国が34%(67%)、台湾が32%(64%)、韓国が25%(50%)、インドネシアが32%(64%)、カンボジアが49%(99%)、ベトナムが46%(92%)、タイが36%(72%)、マレーシアが24%(48%)、インドが26%(52%)でした。()内の数字はその国がアメリカからの輸入品にかけている関税率を表しています。
この関税の計算方法はNHKのホームページで下記の通り記載されていました。
アメリカ国勢調査局によりますと、2024年のアメリカの日本に対する貿易赤字は684億6800万ドル、これを輸入額、1482億900万ドルで割ると、「46%」となります。また、アメリカの中国に対する貿易赤字の額2954億200万ドルを輸入額4389億4700万ドルで割ると「67%」となります。
685/1483=46.2% 要するに日本との貿易赤字が日本からの輸入に対して46.2%ということからなっているという 計算です。
世界中が大混乱になっていますが、トランプ大統領の言いたいことはシンプルに見えます。アメリカへ輸出して利益を上げたければ、アメリカの貿易赤字をイギリスなどのように10%程度に抑えるように各国に通達しているということなのでしょう。アメリカ製品に多額の関税をかけている国は自国の産業を守るためにおこなっているはずなので、輸出企業の競争力を守るか、自国の産業の保護を優先するべきかの狭間で頭を悩ませる日々が続くことでしょう。
日本を含め、それぞれの国の事情はありますが、各国の間でバラつきがあり、アメリカから見ると不公平に見える関税の税率を是正することでカンボジア(99%)のように貿易赤字が輸入金額とほぼ同じ国に対して少しでも税率を下げるように要求するという点では理にかなっているように見えます。
また注目すべきなのはアジアで最も低い税率であるネパールの10%(10%)でしょう。これはカンボジアのように国内で工業を発展させようという国は海外からの輸入品に高関税をかけて保護しないといけませんが、ネパールは国内工業よりも英語のできる人材を育成して海外に出て活躍してもらうことに主眼を置いているため工業が発達せずアメリカに対して輸出による黒字が少ないと推測されます。最初からこの事態を予想できる人はどちらの国にもいなかったと思います。ネパールはGDPの5%を教育費にあっており2%のカンボジアより2.5倍も予算をかけていることになります。カンボジアは人口密度がネパールの40%以下で人口1600万人のわりに国土が広く、保護主義で国内産業を育成しやすいことにより国内失業率は0.3%です。ネパールの方は、GDPはカンボジアより高いのに国内失業率が3%と高くなっていることから貿易黒字が少ないと失業率が高まってしまうリスクが見えてきます。
関税の率の計算方法はずいぶん乱暴なように感じますが、トランプ大統領の主張は極めてシンプルでアメリカへの貿易赤字を減らさないと高関税をかけるということにつきます。
これに対応するには、輸出産業が重要な国では関税を下げてアメリカへの輸出が減らないようにする対応が必要になります。
アメリカへの輸出で収益を上げている大企業が多い日本はまさに、この対応が必要でこれから輸出産業を守るために、アメリカからの輸入関税を下げるための議論が活発になってくるでしょう。しかし、関税を引き下げると日本では工業製品は競争力がありますが、食品に関しては価格で太刀打ちできなくなります。アメリカから安い食材が日本市場を流通することになり、農業が打撃をうけることが考えられます。食料自給率の低い日本では将来おこりうる食糧危機(輸入がストップした時に自給自足できないこと)へのリスクを考えると今回のトランプ関税は日本の永遠の課題である農業が発展して海外からの輸入品との競争に勝てるようにすることが問われていると思います。
日曜の経済番組でも関税の影響に対する議論が活発に行われていました。これからの日本が関税を下げて開国の方向に舵をきるのか、それとも輸入の関税率を維持して24%を受け入れるのか注目していきたいと思います。
<お詫び> 4月6日に投稿した文章では関税の計算を間違えていましたので一度削除して訂正させて頂きました。ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。