今回はテレビで話題のカルロス・ゴーン氏の事件についてお話ししたいと思います。
現在、自身の報酬を過少申告したことで、虚偽報告違反の容疑がかかっています。
有罪になるかどうかは司法の判断を待ちたいところですが、たとえ合法であったとしても5年で100億円もの報酬を受け取ったという事実は日本人としては納得し難いと言えるでしょう。
大企業の経営者の報酬金額に対する考え方は、日本と海外では大きな違いがあリます。
海外では報酬は結果によってランク付けされるという考え方が根付いています。優秀な経営者はプロスポーツ選手と同じように、その地位まで上り詰めたこと、およびその地位で能力を発揮したパフォーマンスを個人の能力として評価されるので平均賃金と比較すると飛び抜けた金額になっても企業側も従業員側も理解し許容するカルチャーが根付いています。
最近では、CEOの報酬が巨額すぎることに対する非難の声も出ているようですが、その声を聞き入れて報酬を引き下げた企業はまだまだ少ないようです。海外企業のような成果主義では、企業が大きな利益を上げた時、CEOとその利益を上げることに貢献し活躍した社員に大きなボーナスが出ますが、頑張ったけど貢献、活躍ができなかった社員はそれほどもらえない仕組みになります。
これに対して日本の評価方式では、企業が大きな利益を上げれたのは、CEO一人の能力ではなく、ついて来てくれた社員のお陰と考えるのが一般的です。海外でも経営者のスピーチで「みんなの協力のお陰で成功した」という言葉は出てきますが、言葉の美しさほど報酬の金額はついて来ていないように思います。日本では縁の下の力持ちという言葉があるように、直接の成果がなくても誰かの失敗をフォローしたり、後工程の人がやりやすいように配慮するなどアシストの精神が存在します。例えばサッカーでは直接の得点だけでなく、得点につながるナイスパスを出したアシストを評価する仕組みがありますが、評価ポイントとしてはゴールにつながる最後のパスを出した人だけが評価されます。この評価では得点に絡むプレーが少なかった人の評価は上がりません。企業でいうと営業成績や開発に直接関わらない間接部門が評価されにくいのと同じことになります。
しかし、私は日本企業が世界で競争優位を確保している要因の一つは、海外では評価されにくい間接部門の優秀さにあると思います。最近、日本への旅行客が増えていますが、旅行者は必ずと言っていいほど日本の接客サービスは素晴らしいと評価してくれます。これは個人のスキルの高さもありますが、それよりも引き継ぎなど連携能力の高さにあると思います。海外ではチップ制のせいもあって一度請け負ったお客に対しては、その時点で担当が決まります。するとその担当者が不在の時は、他の同僚は担当者の手柄を横取りしないため、あるいは手伝っても自分の評価につながらないという理由で代わりのサービスを拒否することがあります。日本では不在の同僚をフォローして、あとでお返ししてもらう助け合いの精神が根付いているので、お客さんは担当不在でも不自由を感じることはほとんどありません。
日本人のこの強みは、サービス業以外の全ての産業においても、競争優位を築いていると思います。
続く