日産ゴーン氏(2)

 日本人の皆んなで協力しあって成功するという意識は強みでもあり、弱みでもあります。
安定期において、完璧な仕事を継続する。日々の積み重ねで改善改良を進めていくのには適していますが、何十年かに一度の危機やパラダイムシフトにより従来のやり方が通じなくなった時、誰もリスクを負わず話し合いで意思決定するために平均的な答えしか出ないことです。

 私は海外に留学したことがありますが、そこで海外の教授に「日本のアントレプレナーシップは死んだ」とまで言われました。流石に頭にきて反論しましたが、最近の大企業の不祥事隠しなどを見ているとリスクを取るリーダーがいないと思われても仕方ないのかなと思ったりもします。

 ゴーン氏が就任した当時の日産自動車株式会社は、業績悪化に陥っていましたが日本文化の強みである勤勉さは十分に維持されていたと思います。車種のラインアップが市場ニーズを捉えきれずシェア争いで負けていたことが要因でした。ゴーン氏が名経営者だったのは、このウィークポイントを挽回して高収益企業に転換したことにあると思います。工場閉鎖などコストカットは、短期的な赤字を減らす効果はありますが将来を見据えるとマイナスの要素の方が強いでしょう。

 「コストカッター」の異名通り、短期間で数字を上げたことは評価されるべきだと思いますが、その後の安定成長はやはり日本人的なチームワークによる間接部門の優秀さによるところが大きいのではないでしょうか。
 ゴーン氏自身も、そんな日本文化を理解していたであろうことは、「高額の報酬だと思われると従業員のモチベーションが下がると思った。」という証言からも明らかだと思います。

 ゴーン氏は、「仕事の垣根を超えて全員で協力し合う」という日本人の強みを活用して、日産自動車株式会社を再建したのですから、そこでの報酬も日本人従業員の働きがいを意識して決めるべきだったと思います。自身の成果に対する高額報酬は、再建という成果を上げた後、株主であるルノーに戻ってから、株主企業での成功報酬としてストックオプションか何かで受け取ればまだ筋は通ったのではないでしょうか。

 そう思っていた矢先、テレビでルノー社の労働者が、インタビューで「ゴーンは給料もらいすぎているから、捕まって欲しいと思っていた。」とコメントしていたのを聞きました。日本以外でも経営者のあまりに高額な報酬は、従業員のモチベーションを下げることに変わりはないようです。

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