AIコンビニ2

2年前にCEIBSのフランス人教授から日本はロボット化で少子高齢化を乗り越えると言われました。確かに労働力不足は乗り越えられるかもしれません。それでも人口減少は市場の減少につながります。ロボットが人と同じ物を欲しがって買ってくれれば良いのですが、そういう訳にはいかないので日本人による日本国内の需要は減ることになります。では経済的に貧しくなるかというと、そうも言い切れません。理由は今、日本に来ているたくさんの外国人旅行客です。今や年間4千万人の外国人旅行客が日本を訪れています。急に外国人旅行客が増えると受入れる側のサービスのキャパをオーバーしてしまい、元々住んでいる人たちの生活が不便になるという声をよく聞きます。そこでロボットが応対してくれるホテル、レストラン、ショップが増えればさらに多くの外国人旅行客を受入れることが可能になります。AIの発達は労働力不足の産業に集中して投入されれば、日本のインバウンズ需要はさらに盛り上がり、GDPを押し上げてくれると思います。もちろん私は経済学者ではありませんのでAIで減る仕事と人口減で働き手が少なくなるスピードのバランスが取れるかまではわかりませんが、政府は移民受入や子育て支援の議論と並行して、このような議論も始めるべきではないかと思っています。

今年の5月にCEIBSを卒業しましたが、2月に海外研修でシンガポールとインドネシアを訪問するプログラムを選択しました。その時の教授が、私達に出した課題は「なぜ、豊かな国と貧しい国が生まれるのか?両者の差はどこにあるのか?」というテーマでした。ここでいう豊かさとは国民一人当たりGDPで評価されます。シンガポールの一人当たりGDPは5万3千ドル、対してインドネシアは3千900ドルで10倍以上の差があります。国全体ではシンガポール2970億ドル、インドネシア9320億ドルでインドネシアが3倍です。人口はシンガポール560万人に対してインドネシアは2億6千万人で46倍。46倍の人口がいて全体のGDPがたった3倍しか違わないのですから、一人当たりGDPが少ないのは当然ですね。実際、豊かな国ランキングではルクセンブルク(58万人)、スイス(837万人)、ノルウエー(523万人)といった人口が1千万人以下の国が上位を占めています。人口が1億を超える国ではアメリカが8位、日本が22位でロシア70位、ブラジル71位、メキシコ72位、中国73位と70番台が続きます。しかし、その次はインドネシア117位、フィリピン127位、ナイジェリア133位、インド144位、パキスタン148位、バングラディシュ151位となり、最下位が189位の南スーダンなので真ん中以下となります。このことは、いくら国のGDPが大きくても人口が多すぎた場合は一人当たりの生活は貧しくなることを意味します。一人当たりGDPが上位に来る国は人口の割に大きなGDPを生み出すことができる国ということになっているのが現実です。実際シンガポールは自国の500万人は高給取りですが、安い労働力は周辺国の人々に支援してもらっている状態といえます。また中東のドバイは、国民に毎月20万円の生活費を支給し、住宅取得援助までしていますが、あくまで240万人の自国民に対してのみで外国人は適用外です。ドバイはこの外国人が2000万人ほどいます。一口に外国人といっても投資してくれる先進国の富裕層、安い賃金で労働力を提供してくれる貧困層の2種類に分かれます。ドバイ、シンガポールとも国外の貧困層がインフラを支えてくれることによって少数の自国民が裕福な暮らしを享受しているというのが実情です。アメリカ、日本、中国のような人口大国では貧困層が外国でなく自国民の中に発生しているというだけの違いにすぎないのです。私は課題に対して豊かな国は人口が少なく、国内の所得格差は少ないがその分、周辺の後進国に貧困を押し付けているという内容で論文を書きました。資源国においてもカナダ、オーストラリアのように人口が少なければ一人当たりの資源は多いので裕福になれますが、ブラジルやナイジェリアのように人口が多ければ、たとえ資源が多くても一人当たりの資源は少なくなるので裕福になれないという私の持論は幸いにも教授に受け入れられ、90点という高得点をもらうことができました。

以上の理由により、私は日本の人口が減ってもAIにより現在のGDPを維持できれば一人当たりの生活は豊かになると思っています。今までは紙幣をたくさん発行して全国民にお金を配っても、皆が増えたお金の使い道を受け止めるだけの労働力、物資がないため物不足によるインフレを起こすだけでしたが、AIロボットの誕生により、国民全員が裕福になってより良いサービスを受けたいと思った時、移民を受け入れて外国人に安い賃金で働いてもらうのではなく、ロボットに低コストで良質なサービスを提供してもらうことで物不足、人手不足による物価上昇を防ぎながら国民全員が裕福になることができる可能性が出てきたのではないかと期待しています。そのためには、イギリスで起きた第1次産業革命のようにAIを所有する資本家だけが潤い、街には職を失った労働者が溢れる(人口減の日本ではおこりにくいと思っていますが)ことのないように国が制度を整える必要があります。我々もAIをしっかり理解して人とAIが共存できる社会をいかに構築するか考え始めなければならない時期にきているのではないでしょうか。

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